お父さんに促されて、リビングを出た私は、今聞いた話を思い返していた。


階段を上りながら、音楽室の前から生徒玄関までの道のりを想像する。


あの笑う幽霊が、お父さんの言っていた幽霊に間違いない。


だけど、職員室に助けを求めに行ったんじゃないの?


どうして生徒玄関から出れば良いって言われるようになったんだろ。


二度目で失敗した私には、もう関係のない話なんだけど。


部屋に戻り、交換された布団に潜り込んだ私は、携帯電話を手に取って、メールの作成画面を開いた。


私達が知ってる話と、お父さんが言った話が違う。


でも……だからって何を送れば良いんだろう。


私が失敗して、もう何を知ったとしても意味がないのに。


指をフラフラと動かして、一文字も打つ事が出来ずに、私は目を閉じて考えた。


音楽室の前で苦しくなって、職員室に向かったんだよね?


自分がそうなる可能性があるって分かっていたなら、薬は持っていなかったのかな?


持病があるならなおさら持っているだろうし、考えてみれば気になる部分は色々ある。


まあ、お父さんも聞いた話だって言っていたし、詳しくは知らないんだろうけど。


そんな事を考えながら……フッと落ちるように私は眠りに就いた。