「南部君、気付いてた?音楽室から生徒玄関まで、ずっと蛍光灯が切れてたの」


「あー、だから暗かったんだ。それにしても音楽室から生徒玄関までか。やっぱり山中さんは、願いを叶えようとしたのかな」


南部君もそう思うんだ。


校門を出て、彩乃の家の方に向かって歩きながら、いつもは電話でしか話が出来ない南部君と、こうして話している事が不思議に感じる。


いやいや、そんな事は今はどうでも良い。


「ところでさ、失敗した時に失う大切な物って……やっぱり命なの?」


最初に聞いた先輩の先輩が死んだのなら、その可能性はあるよね。


「いや、そうでもないと思うけど。死んだのは最初に話した人だけで、他の人が死んだとは聞いてないからさ」


あ、そうなんだ。


だとすれば、ますます気になってしまうんだよなぁ。


大切な物が何なのかって。


「南部君はさ、もしも願いが叶うとしたら、どんな願いを叶える?」


「お、俺!?俺はその……好きな人と付き合いたいなーなんて。まあ、やらないけどさ」


へぇ。好きな人がいるんだ?南部君が好きな人って誰だろ。


でも、人の気持ちをおまじないなんかで変えれるとは思えないし、それで好きになってもらっても、きっと本当には喜べないだろうな。