「ねぇ、お父さんが中学生の時に、学校で変な噂とかなかった?」


あの儀式をどう説明すれば良いかが分からない。


音楽室から生徒玄関まで歩く噂なんて、もしもお父さんが知っていたら、疑われそうな気がするから。


「へんな噂?そうだなあ……お父さんが中学生の頃は、口裂け女とか、テケテケとかが流行ったかな。いやあ……あれは怖かったなあ」


「そんな都市伝説じゃなくてさ。どこにでもあるでしょ?学校の七不思議みたいなやつ」


「音楽室のベートーベンの絵が動くとかいうやつか?それなら、放課後になったら一段増える十三階段とか、理科室の人体模型が歩き出すとか……」


本当にどこの学校にでもあるような、誰も見た事がない噂話。


これじゃあ、儀式の事はあまり期待できないかな。


「後は……そうだな。どこまでも続く廊下に、悪魔が現れるトイレの鏡だろ?あれ?これは高校だったか?」


20年以上も前の事だから、思い出せなくても仕方ないよね。


むしろ、ここまで覚えている方が凄いよ。


怖かった感情はいつまでも覚えているのかな?


私が幽霊に襲われていた事も、大人になっても忘れられないんだろうな。


お父さんを見ていたら、そんな風に思えて仕方がなかった。


「後は……」