十分に温まる事も出来ずに、震えながら浴室を出た私は、すぐに身体を拭いてパジャマに着替えた。


パジャマを着ていても寒い。


こんなに寒いなら、布団に入っても汗なんてかかないだろう。


とりあえずリビングに行って、お母さんが戻っているかを確認するけど……まだいない。


お父さんがソファに座ってテレビを見ていた。


この部屋は暖かい。


壁を伝いながらファンヒーターの前に歩いて、熱い風を背中に当ててホッと一息。


「菜々か。お母さんかと思ったよ。どうだ?体調は」


お父さんは不規則な勤務の仕事をしていて、ここ何日か会ってなかった。


同級生の女の子は、自分のお父さんの事を嫌っているみたいだけど、私のお父さんは優しくて、いつも私を気に掛けてくれるから好きだ。


「まだフラフラする。でも、朝よりはマシかな?」


「そうか。しかし菜々も鈍いな。トラックが水を跳ねたら素早く傘でガードしないと!」


大振りなジェスチャーで、傘を前に持ってくる仕草をする。


学校の前で倒れてたなんて、とても言えないな。


そう言えば……お父さんが中学生の頃も、願いが叶うなんて噂話があったのかな?


お母さんはこの町の出身じゃないから知らないだろうけど、お父さんなら……。