休み時間中、ずっと考えていた私は、カバンを持って立ち上がった。


遅刻して来たのに早退したくはないけど、彩乃が気になって仕方がない。


メールを送っても返事はないし、何より二度目は失敗するという話が頭から離れないから。


「森川さん、もう帰るの!?」


「うん、彩乃の家に行ってみる!無事なら良いんだけど」


「ちょっ……待って!俺も行く!」


どうして南部君まで……と思ったけど、何がどうなっているか分からない今の状況だと、いてくれた方が心強いかな。


廊下に出た私は、まだ消えたままの照明を辿るように生徒玄関へと向かった。


階段を下りているとふと思う。


昨日、彩乃は同じ場所を歩いて、幽霊に話し続けていたんだと。


「山中さんはどんな願い事を叶えようとしたか聞いた?二回目だと、一回目はもう叶えたんだよね?」


「うん。私は信じなかったんだけど、一回目は視力を良くしたみたい。それで簡単だからって。頭を良くしたかったのかな」


昨日の時点で二回目は絶対に失敗すると分かっていれば、それを伝える事が出来たのに。


いや、彩乃なら私が止めても行っていたかな。


19時19分に間に合わなかった事を祈りながら、私は南部君と二人、生徒玄関で靴を履き替えた。