何か付いているのかなと、慌てて額を触ってみるけど……何もない。


そんな行動を取っていると、私の身体が左右に揺れて、指先が私の額から外れたけど……弘志さんは固まったように動かない。


指で私を追うでもなく、変わらず一点を指しているだけ。


何?私を指差してるわけじゃないの?


そっと横に移動してみても、弘志さんの指は動かない。


それどころか、視線も私には向けられていなくて……。


何を指差しているのか、目でその先を追ってみると……うずくまった彩乃。












「キミは大切な物を失った」











弘志さんの指と視線、そしてその言葉で、私は気付いてしまった。


もしかして、元に戻したいとまで願った彩乃を失うって事?


そんな……。


私が彩乃を失うとしたら、何の為に儀式をしたの?


人の為に願い事を叶えても、二回目は必ず失敗して、それを奪われる。


つまり……願い事は叶わないのと同じ。


これは夢、これは夢だから大丈夫と、必死に自分に言い聞かせたけど不安は拭えない。


目が覚めて、彩乃の無事を確認するまでは、本当に彩乃を失うのかもしれないという思いがあるから。


彩乃を指差す弘志さんに何も言えず、私は立ち尽くした。