「そうだよ。メガネを外した方が可愛いって言われたから、その願いを叶えてもらったの」


確かに、彩乃はメガネを外した方が可愛く見える。


私のイメージかもしれないけど、メガネをかけていると、真面目な優等生という感じがする。


だけど、メガネを外せば……ちょっと遊んでるような雰囲気になるのだ。


「それなのにさ、菜々が元に戻してなんて願いを叶えるから。ほら、見てよ……視力も元に戻ったじゃない」


肩で口元が隠れていて、鼻より上の部分しか見えないけど、少しだけこちらを向いた彩乃の顔には、いつものメガネがかけられていたのだ。


ドロドロの時に見た、あの黒い空洞を思い出してしまったけど……良かった、目はある。


「何だ……メガネをかけてても彩乃は可愛いんだから、元に戻って良かったじゃない」


「良くない!菜々が言ったんでしょ!?彩乃はメガネを外した方が可愛いって!そう聞いたって言われたよ!?」


言われたって、誰によ?


そんな事は色んな人に言ってるから、誰の事だかさっぱり分からない。


「嬉しかったのに……だから願いを叶えたのに!!視力が元に戻ったら、何の意味もないじゃない!」


何を話しても彩乃は怒るなら、自分の努力は無駄だったような気がしてしまう。