「そうだったんだ。だから私は元に戻ったんだね」


良かった……いつもの彩乃の声だ。


近付いて見ると、どこも溶けている様子はないし、儀式をする前の彩乃と変わっていない。


おかしいと感じたのは気のせいだったのかな。


まあ、そもそもが夢なんだし、おかしいと言えば、私がこの家にいる事自体がおかしいから。


「そうだよ。だけどね、二回目に失敗して、大切な物を失ったみたいなの。教えて彩乃。彩乃の大切な物って何だったの?」


私がそう尋ねると、彩乃は肩を小刻みに震わせ始めた。


泣いてるの?


そんなに大切な物を失ったの?


そうだよね。


身体がドロドロになるくらいなんだから、失った物は大きいよね。


口に出すのも辛いんだろうな。


それなのに、私は自分が何を失ったのかが不安で、聞こうとしているんだ。


「菜々は……」


ポツリと、声を震わせて呟いた彩乃。


「菜々は……いつもそうだよ。私の為、私の為って、私を子供扱いでさ。誰が元に戻してって頼んだの?それで菜々が失敗したからって、私になんの関係があるの?」











夢とはいえ、その言葉は信じられなかった。


彩乃はこんな事を言うような子じゃない。


だけど……私は悲しかった。