私の手を掴む白い手が、グイッと後方に引っ張る。


三階の、音楽室の隣の階段でさせられたように、その場でグルンと私の身体が回転した。


そして……目の前にいる、制服姿の幽霊。


夢で見た姿と……全く同じ。


粘土で作られたような顔に長い髪。


見た瞬間、全身を駆け巡る、撫でられているかのような悪寒。


その背後では、人魂が私を哀れんでいるかのように、動きを止めている。












「見ちゃったね?見ちゃったね?幽霊を。見たらどうなるか分かる?分かるよね?大切な物を失うんだよ?」












声は笑っているのに……顔が作り物みたいだから、表情が変わっていない。


あまりに不気味で声が出ない。


今すぐ逃げ出したいのに、身体が震えて動けない。


私はどうなるの?


大切な物って何?


彩乃みたいに身体がドロドロになるの?


涙と共に、色んな思いが浮かんで、目の前の粘土質の顔を見詰める事しか出来なかった。












「この顔が怖い?怖いよね?良いよ、一緒にいてくれるんだから、顔を見せてあげるよ!」












笑う幽霊はそう言って、顔に手を伸ばした。


粘土みたいだと思っていた顔は……仮面だったのだ。