まさか、幽霊からねぎらいの言葉を掛けてもらえるとは思わなかった。


これは質問じゃないから、大丈夫のはず。


ゴールが見えて、気がゆるんだ私には、話を遮る事なんて出来なかったから助かった。


「ありがとう。ここを出たら、二度とこんな事はしないから……私にはもう関わらないで」


切実な願い。


彩乃の身体が元に戻ったとしたら、もう私が関わる必要はない。


日中は儀式の事を考えて、夜になったら幽霊に怯える生活もこれで終わり。


しばらくは後を引きそうだけど、それもすぐに慣れる。


すのこから降りて、生徒玄関のドアに手を伸ばしたその時だった。












「違う!あいつは……後ろにいる!!ずっとお前に憑いている!!」












そんな声が背後から聞こえて……私の背筋が凍り付いた。


どういう事?


今の言葉の意味を理解出来なかった。


笑う幽霊が、私にずっと憑いていたって事?


だって、笑う幽霊が現れる前に、怖いから離れたんじゃないの?


そして、しばらくしてから戻って……。


ほんの一瞬考えて、その違和感に気付いた私は、慌ててドアの取っ手を掴んだ。


グッと力を込めるけど、ドアはロックがかかっていて開かなかったのだ。