階段を下り、生徒玄関の方を向いた私の身体に、撫で回されるような悪寒が駆け巡った。


暗い廊下。


生徒玄関の前。


ふわふわと宙を漂う、白い筋のような物が見えたのだ。


筋の先端は球体にも見える。


初めて見たけど……あれは人魂?


真っ先に思い付いたのはそれ。


風がないのに、どこに行くわけでもなく、生徒玄関の前を旋回している。


あれに近付いても大丈夫なの?


背後に幽霊が現れた時とは違う、不気味な悪寒。


出口はそこにしかないのに、これ以上進んではいけないような気がする。


「あ、あれは……何?」


幽霊に憑かれている私が、人魂なんかに怖がるのはおかしいかもしれない。


だけど、幽霊とは異質の悪寒に、私の足は動かなかった。











「アレハ ヨクボウノカタマリ。カナエラレナカッタ ネガイ……」












欲望?叶えられなかった願い?


つまり、この儀式に失敗した人達の思いって事なのかな?


だとしたら……あの中に、彩乃の願いもあるのかな?


立ち止まってそんな事を考えていると……足元がグニャグニャと動き始めた。


慌てて床を見ると、床から人の顔や、手が出始めている。


立ち止まってはいられなかった。