「フーッ!フーッ!」










始まったと同時に、首筋に感じる荒い息遣い。


この前の幽霊とは違う。


前回聞いた時は、幽霊はいっぱいいるって言っていたけど……どれくらいいるんだろう。


……ダメだ、早く話し掛けないと。


質問されたら終わりなんだから。


「わ、私さ、今日、同じクラスの南部君と付き合い始めたんだ。優しくて、安心出来るの」


音楽室の隣、少しだけ広いスペースに向かって歩き始めた私は、そこにある階段を見た。


流されるままにここに来たけど……儀式が始まった途端、怖くてたまらなくなって、早く外に出たいと思ってしまう。












「ソウナンダ……」













低く、唸るような声が耳元から聞こえる。


何かが違う……。


この前の幽霊とは明らかに。


一言で、背筋が凍り付いてしまいそうな圧迫感。


ゾワゾワと、背後から頬を撫でられているかのような悪寒を感じながら、震える足を前に出した。


昼間に考えていた、儀式のシミュレーションなんて役に立たない。


頭の中から、どうすれば良いかなんて完全に抜け落ちている。


ただ、音楽室の隣の階段を使って一階に行こうという事だけは覚えていた。