そう考えると、もう私の足は止まらなかった。


携帯電話を確認すると、もう19時11分。


本気で走っても、私では間に合うはずがないけど。


それが分かっているから、南部君も向井さんも部屋で待っているのだろう。


私が自由になるわずかな時間。


玄関で靴を履き、家を飛び出した私の目に、車庫の中にある南部君の自転車が映った。


これなら、5分もあれば学校に着けるかも。


いよいよ激しく降り始めた雨が、小さな物音を掻き消してくれる。


迷う間もなく自転車に駆け寄った私は、鍵が付いたままのそれを車庫から出して、学校へと向かった。


バチバチと大粒の雨が私の身体を打ち付ける。


家を出て、まだ何分も経っていないのにびしょ濡れ。


顔に当たる雨粒が痛いけど、時間に間に合うなら何だって良い!


立ちこぎのまま、一度もサドルに腰を下ろす事なく走って。


息を切らせて学校に到着した時には、身体の前面からは水が滴り落ちていた。


「はぁ……はぁ……間に合ったかな」


学校の職員玄関に入り、スカートのポケットから携帯電話を取り出して、時間を確認すると19時17分。


携帯電話は濡れているけど壊れてはいない。


もう、先生に了解を得ている時間なんてなかった。