「いじめはなくなったらしいんだ。だけどそれは、いじめていた人が、ただいじめなくなったって事じゃないんだ」


うん?でも、結局いじめられなくなったって事だよね?


だったら、その先輩にしてみれば良かったんじゃないの?


「つまり、願いは叶ったんだよね?いじめがなくなるようにって願いは」


私が尋ねると、南部君は首を横に振る。


あれ?違うの?


だって、いじめはなくなったんでしょ?


不思議に思っていると、南部君の口が開いた。


「その先輩の望みは、いじめがなくなる事じゃなかったんだよ。いじめていた人を、全員殺してくれっていうのが望みだったんだ」


それを聞いて、私はどう反応して良いのか分からない。


まさか、いじめられなくなったっていうのは……。


「無免許でバイクを運転していた、先輩をいじめていた人は……交通事故で死んだんだ。他の人達も、何らかの理由で死んだらしいよ」


願いが……叶ったんだ。


これだけを聞くと、何でも願いを叶えてくれる、凄い方法にも思えるけど……。


南部君が昨日言っていたみたいに、失敗すれば大切な物を失うんだよね?


私は、そのリスクの方を詳しく知りたい。


大切な物は何を指すのか、どうやって失ってしまうのかを。