人間なんてそんなものかもしれない。


中学を卒業したら高校に入学して、そこを卒業したら進学か就職。


誰かと結婚して、家庭を築いて……最後には誰もが死ぬ。


こんな人生は嫌だと足掻いてみても、それに抵抗して抜け出せる人なんてごく一部。


ほとんどの人が、大きな流れには逆らえずに生きるんだろうな。


私も今まで、そんな感じだった。


小学生の頃、好きな人を友達に話したら、次の日には皆に冷やかされて、必死に否定したらそれっきり。


発言力のある人が、こうすると言えばそうなったし、嫌でも従うしかなかった。


断れば、いじめられてしまうから。


出来るだけ多数派に付いて、問題が起こらないようにしてきた。


それも大きな流れ。


私が今、こうしているのも流れの中にいるからなんだろうな。


「そうなったらそうなった時だ。俺が一生面倒を見るから、菜々は気にしなくても良いさ」


いつものように前髪を掻き上げて、向井さんはフフッと笑顔を見せた。


気にしなくても良いって言われても気にするよ。


それに、一生面倒を見るって……。


私は南部君と顔を見合わせて、苦笑いを浮かべた。


そう言われて嬉しいんだけど、ついさっき南部君と付き合い始めたばかりだから。