「それは集中治療室を出たらきくしかないな。俺は見てないけど、身体がドロドロになったんだろ?そうなって失った物なんて、考えたらきりがない程あるからな」


確かにそうかもしれない。


あんなになって失った物。


私には時間とか身体とか、その程度の事しか考えられないけど、向井さんなんかはもっと思い浮かぶんだろうな。


「それよりも俺が気になるのは、いつまで菜々の気持ちが二回目の挑戦に向いているかだな」


本当にいつまで考えれば良いんだろう。


私と南部君と向井さんの三人が集まると、考えたくなくてもその話になっちゃうし、考えるなと言う方が無理だ。


それでも、南部君のおかげで少しは考えずに済む時間が出来ているんだけどね。


「まあ、森川さんが行きそうになったら、俺達で止めるから大丈夫だと思うけど……ずっと続いてしまうなら、受験も失敗してしまうかもね」


「それは嫌だな。でも、最近は授業の内容も頭に入ってないし、正直ヤバいかも……」


授業中は感じない不安を、今になって感じ始めている。


この不安を払拭する為に、儀式に走ろうとする気持ちがわき上がってくるのも感じるし。


抵抗しても流されてしまう渦の中に、私は飛び込んだんじゃないかと思えて仕方がなかった。