短い、でも強いキス。


あまり長い間出来ないのは、向井さんがいつやって来るか分からないから。


ほんの数秒だったけど、南部君の想いを知る事が出来たから嬉しい。


「ごめん。俺らしくないよね。でも、本当に好きだから」


私から離れて、照れたように頭を掻いた。


「うん、南部君らしくない。でも、私も好きだから。私しか知らない姿を見られたのは嬉しいかな」


そう言うと、南部君はさらに照れたようで。


視線をそらし、もごもごと口を動かしている。


向井さんみたいに、ストレートに気持ちを伝えてくるのは嫌いじゃない。


だけど、南部君みたいに自分の想いをなかなか伝えられなくて、もどかしい姿は可愛く思える。


「だったら……俺と付き合う?」


南部君にとっては一大決心だったのだろう。


声が震えているし、さらにそわそわし始めたのだ。


いつ言われるのかなと、待ちわびていた言葉。


一緒に夜を過ごしたし、私しか知らないとは言え、今日の明け方にすでにキスをしているから。


確かに、儀式の事を忘れるくらい嬉しい言葉。


私が断る理由なんて何もない。


「うん……」


小さく頷いて、私も視線をそらした。


ただ返事をしただけなのに、何だか恥ずかしくて。