今日の朝まで、一晩中抱き締めていてくれた腕が、再び私の身体に回された。


南部君の胸から、ドクンドクンという早い鼓動が聞こえる。


一度やった事に対しては、抵抗がなくなるのかな。


その行動には何の迷いも感じられなかったし、私も抱き締められる事に抵抗がない。


「南部君、怒ってたんじゃないの?」


顔を見上げて、小さく呟くと、さらにギュッと力を込める。


少し苦しいけど、嫌じゃない。


「怒ってるよ。俺はこんなに森川さんを好きなのに、どうして他の事を考えるかな?俺の事だけを考えてほしいよ」


そんなに私を想ってくれてたんだ。


南部君と儀式を天秤にかけたわけじゃないけど、南部君にはそう映っていたんだろうな。


私も好きだけど、どうしたら儀式の事を忘れられるか私にも分からない。


気付けば、それの事ばかり考えてしまっているのだから。


「出来るなら私も忘れたい。もっと南部君を好きになったら、忘れられるかな?」


そう呟くと、南部君は私から離れて、ゆっくりと顔を近付けた。


鼻と鼻が触れてしまいそうなくらい接近して。


「俺は、森川さんの事だけを考える自信がある。だから森川さんも……」


そう囁いて、さらに近付いた唇が……私の唇と重なった。