そんな向井さんと別れて、二人で南部君の家に向かう。


最初の儀式以降、随分色んな事があったから、順を追って話しても、音楽室から生徒玄関までの距離を三往復は出来るくらいネタが出来た。


南部君が私と話をしてくれないのは寂しいけど、それも話のネタ。


「な、南部君……怒ってる?」


私がそう尋ねても、振り返ってくれないどころか、何も言ってくれない。


私が儀式の事を考えるのは分かってるでしょ?


昨日もだったし、改めて考えてみれば、どうして怒られているのか分からなくなってきたよ。


だってそうじゃない?


私が儀式をしたくて仕方なくなってしまうから、南部君と向井さんはそれを止めようとしているわけで。


そうじゃなかったら、二人が私と一緒にいる理由がなくなるわけだから。


なんて考えてみても、それを口に出す事は出来ない。


言ってしまったら、南部君をますます怒らせてしまうかもしれないから。


南部君の家に着くまで無言のまま。


二人でいる間、ずっとこんな調子だったらどうしよう。


家の中に入り、南部君の部屋に向かって歩いて、ドアを開けた南部君が室内に入った。


私も中に入って、ドアを閉めた時。


南部君が振り返って、私の身体を抱き寄せたのだ。