そう考える私の前で、向井さんはドアを開けた。


「よう、弘志。今日もお前に会いたいって、変わった客を連れてきたぜ」


制服の袖を鼻に当てて、屋内に入った。


私と南部君もその後に続いて入ったけど……相変わらず汚い部屋だ。


私の部屋も汚いけど、ここはそれを上回る。


「……は……にいる」


部屋の隅で、ブツブツと呟く弘志さんはやっぱり不気味だ。


この前来た時と同じ場所にいる。


「さて、どうする?弘志はこんな調子だし、何をするつもりだ?」


向井さんに促され、私は弘志さんに近寄り、屈んで耳を澄ました。











「幽霊は……にいる」






「幽霊は……ろにいる」









「幽霊は後ろにいる」











聞こえた。


弘志さんが何を呟いているのか、ハッキリと聞こえた。


幽霊は……後ろにいる?


確かにあの儀式の時にはずっと後ろにいたけど、それを知った上で二回目をやったんじゃないの?


それくらいは私にだって分かるから、大した情報じゃない。


この言葉に、何か意味があるかと思ったけど……考え過ぎだったのかな?


それでも、他にも知りたい事はまだある。


弘志さんが答えてくれるかは分からないけれど。