思い立ったら、まずは試してみたい。


最初のチャイムが鳴るまでにはまだ時間がある。


机の上をそのままに、教室を出た私は、音楽室の前に向かった。


廊下では、昨日のテレビ番組の話や好きなアーティストの話で盛り上がっているけれど、今の私には関係がない。


いずれ話題にも上がらなくなる話なんて、願いが叶う事に比べたらどうでも良い。


「幽霊がここにいて……儀式スタート」


音楽室のドアに背を向けて、そう呟いた私は、すぐ隣にある階段に向かった。


普通なら、照明が消えている廊下を行くだろうけど……私は違う。


きっと皆、願いを叶えようとするあまり、ここまで考えなかったんだろうな。


それをするかしないかで、成功か失敗かに分かれるのなら、じっくり考えた方が良いに決まってる。


階段を下りながら、成功のイメージを固めた私は、二階に着いてすぐに一階に下りた。


中央の階段と比べると、この階段は幅が狭くて、廊下からも見えにくい。


一階に到着して、廊下を歩きながら、儀式の成功を確信した私は、いつの間にか笑みを浮かべていた。


後は……19時19分に間に合うように南部君と向井さんから逃げるだけ。


二人に気付かれたら、絶対に止められる事は分かっているから。