「い、いやああっ!!」





声を上げて、手足をバタつかせた私は、布団と南部君の腕の中で目を覚ました。


近くにある南部君の顔に驚き、思わず身体を反らしてしまうけど……本物の南部君だ。


と、なると……あれは夢?


枕元にあるはずの携帯電話を手に取り、時間を確認すると……4時50分。


時間的には続いていて、本当に夢なのか、現実に起こった事なのかが分からなくなってくる。


夢の中でも、夢特有の矛盾があまり感じられないから怖い。


相変わらず心臓はドキドキしていて、現実に起こった事だと言われれば信じてしまいそうだ。


「本物……だよね?」


スースーと寝息を立てる南部君の顔は可愛くて。


ツンツンと頬をつついてみる。


夢の中では、あの幽霊に邪魔をされて出来なかったキス。


顔を上げれば届く位置に、その唇はあって。


そっと指で撫でて、それを私の唇に付けた。


これも一つの間接キスなのかなと、少し恥ずかしくなりながら。


もう少しで5時を告げるアラームが鳴る。


帰る前に一度だけと、起こさないように身体を動かして。


ゆっくりと南部君の顔に近付いた私は、どうしようもなく好きになってしまった気持ちに背中を押され、唇を重ねた。