引き合うようにお互いの身体を抱き締めて、その温かさを身体中に感じる。


本当に、凍った身体が溶けているかのような錯覚に陥った。


あんなに怖い目に遭ったのに、南部君に抱き締められると安心する。


今、ここに幽霊が現れても……こうして抱いていてくれるなら、そんなに怖くはない。


でもお願い。


現れないで。


邪魔をしないで。


5時まであと少し。


今はこうして、溶けるような時間を過ごしたいから。


「暖かい。南部君に抱き締められてて幸せ」


「俺も幸せだよ。ずっと好きだったから、こうしていられるのが夢みたいだ」


昨日の夕方までは何も思っていなかったのに。


こんなに心地良いなら、どうしてもっと早くに南部君の気持ちに気付かなかったのかと、後悔にも似た気持ちになる。


「でも、もう帰る時間だね。あ、あのさ、帰る前に……キスして良いかな?」


その言葉にドキッとする。


怖い目に遭って、離れたくないというのもあって……私は小さく頷いた。


初めてのキス。


ドキドキしながら顔を上げた私は……。












「ひっ!!」












「ほら、キスしよう!」


南部君ではなく、私はあの幽霊に抱き締められていたのだ。