シャワーチェアの座面に置かれた携帯電話を手に取り、画面を見てみると……番号は出ていない。


何も表示されていないというのは、どういう事なんだろうと首を傾げる。


確かにこれは、どこからか掛かっている電話なのだ。


画面に表示されている時計は4時44分。


ここまで来るのに数分掛かっているとはいえ、偶然見たタイミングで、こんな不気味な数字を見てしまうなんて。


怖いけど……出てみよう。


「も、もしもし……」


声が震える。


声を出すのも怖いけど、携帯電話から聞こえる声を考えると、出来れば何も話さないで切ってほしい。


でも……私の期待はあっさりと裏切られてしまった。










『あははっ!!見付けた!そこにいたんだね!!』









この笑い声は……忘れるはずがない。


おまじないをしていた時に、二階から聞こえた声。


それが、今、私の携帯電話から聞こえているのだ。


「ひいっ!!」


思わず携帯電話を離すと、シャワーチェアの上に落ちて、さらにそこからタイルの上に落ちた。





カラッ……カラララ。




タイルに弾かれ、鏡の下に転がる携帯電話。


「ツーッ、ツーッ」という音が聞こえ、通話が終了したのを告げていた。