やっぱり浴室なのか。


音が響くのは分かるんだけど、二階の私の部屋で、あんなに大きな音が聞こえていたのはどうしてだろう。


お母さんも南部君も気付いていなかったみたいだし、私にしか聞こえないのかな。


何か嫌だなあ……。


どうせなら、お母さんに怒られても、皆に聞こえた方が良かったのに。


私だけしか気付かないというのが、妙に孤独を感じるよ。


寒いし怖いし、南部君を連れて来れば良かったよ。


なんて後悔していても遅い。


すぐそこに携帯電話があるのだから、さっさと取って、二階に上がれば良いんだ。


浴室のドア。


そんな事を考えながら、それを開けると……。












ピピピピピピピッ!!












こちらを向いているシャワーチェアの座面に、携帯電話が置かれていたのだ。


どうしてこんな所に、こんな意味ありげな状態で置かれているのか分からない。


それに……近付いてみて分かる。


これはアラームの音じゃない。









電話の着信だ。









と、なると……まだ朝5時ではないのかもしれない。


一抹の不安を覚えながら、手を伸ばして携帯電話を取る。


側面にある鏡を見ないように、顔を背けながら。