もしかして、南部君がいる事に気付いたお母さんが携帯電話を移動させて、取りに来た私を怒ろうとしてるんじゃ……。


そんなわけないよね。


怒るなら気付いた時点で怒るだろうし、こんな回りくどい事はしないだろうから。


とにかく、音のする方に行かなければならない。


早くこのアラームを止めないと、お母さんに気付かれてしまうから。


音のする方……ドアの方に歩いて、ドアを開けると……。










ピピピピピピピッ!!









聞こえるアラームの音が、さらに大きくなった。


早く探さないと、こんな音だったらすぐにお母さんに気付かれてしまうよ。


アラームが鳴っているという事は朝の5時。


暗く、寒い廊下に出ると、足元から冷気がよじ登ってくるようで、幽霊に遭遇した時とは違う身震いをしてしまう。


背中を撫でられる感じじゃない。


皮膚で感じる、本当の寒さというやつだ。


「何で部屋の外に……幽霊が持って行ったとか言わないでよ……」


そう考えると、どうして南部君を起こさなかったのかと、考えなしに部屋を出た自分自身にガッカリする。


南部君を起こせば、携帯電話を回収すると同時に、帰ってもらえるのに。


そう思いながら、階段に向かった。