「そっか。そうだよね。怖い思いをしてるのに、おまじないの事なんて考えてられないか」


そう言いながら、自分の膝に置いた手を、もぞもぞと動かす南部君。


やっぱり落ち着かないのかな。


汚いとはいえ一応女の子の部屋だし、緊張してるんだろうな。


「夜に考えないのは良かったかな。考えすぎて眠れなくなると困るし」


「でも、その代わりに幽霊が出るんじゃどうしようもないよね」


そうなんだよね。夢の中での出来事だと思っていたのに、まさか現実に現れてしまうなんて。


昨日と今日で、こんなにも違うとは想像していなかったよ。


たった一日で何もかもが違う。


おなじないに対する考え方も、幽霊も……南部君への想いも。


世界が変わってしまったかのようで、戸惑いを覚えるけど。


「あ、あのさ……南部君は何時に……帰る?」


「な、な、何時にって……お、俺は何時でも。朝までだって……」


純粋に、少しでも一緒にいてほしかったから言った言葉だったけど。


南部君の反応を見て、私はとんでもなく恥ずかしい事を言ったんじゃないかと思うと、顔が熱くなってしまった。


まだ付き合ってもいないのに、私は何て事を言ったのだろうと。


恥ずかしくて、南部君から顔をそむけた。