「願いが叶う?そんなわけないじゃない。夢でも見たんじゃないの?」


学校の帰り道、私は友達の彩乃が言った言葉に、愛想笑いをしてそう答えた。


そんな方法があるのなら、今の私の願いは高校受験に失敗しませんようにだ。


中学三年の冬にもなると、嫌でもその事を考えてしまう。


「夢じゃないよ。本当にあるの。生徒が誰もいなくなった19時19分に、音楽室の前に行くって、奈々も聞いた事あるでしょ?」


彩乃が言ったのは、私の学校にある怪しい噂話。


トレードマークのポニーテールを揺らし、フフッといたずらな笑顔を私に向ける。


「あるけど、そんなの信じてるんだ?噂話なんか気にしてる暇があったら勉強しないと。彩乃、志望校危ないんでしょ?」


私も人の事を言える程、余裕があるとは言えないんだけどね。


肩より少し長いくらいの髪を、指でクルクルと回しながら、私はこの前のテストの結果を思い出して溜め息を吐いた。


「大丈夫だよ。だって、願いが叶うんだよ?私……眼鏡を掛けてたでしょ?」


そう言えば、彩乃は最近眼鏡を掛けていない。


重度の近眼で、眼鏡は外せないって言っていたのに……。













「本当に願いが叶っちゃったんだ。今は何でも良く見えるよ」