「——いいかげんにしろよお前!」


 大声で、扉のガラスが割れてしまうんじゃないかと思った。
 大和くんが勢いよく扉を開くと、みんなの視線が私たちに集中する。

 中には、生徒会長以外のみんながそろっていた。
 まだ鞄を手にしている蒔田先輩を見ると、みんなが集まったのも少し前だったんだろう。

 私と目があった蒔田先輩はちょっと肩をすくめた。


 部屋の真ん中で、鷲尾先輩と浜岸先輩が睨み合っていた。……いや、睨んでいるのは浜岸先輩だけ。鷲尾先輩は俯いている。

 ふたりは私たちを見たけれど、すぐに視線を元に戻してしまった。


「ど、どうしたんですか……」


 こそっと蒔田先輩に聞くと、「わたしもよくわかんないんだよねぇ」と困った顔をした。呆れたように髪の毛を弄りながら携帯を取り出して「ま、そのうちどうにかなるんじゃないー?」と近くの椅子をひいて腰を下ろす。

 ちらりと大和くんを見ると、冷めた視線で真ん中のふたりを眺めていた。


「おい、いい加減なんか話せよお前」

「……でも、別に僕は」

「お前が始めたことだろ! いつまでもおろおろおろおろしてんじゃねえよ! そういうところが鬱陶しんだよお前!」


 なにを言っているのか、浜岸先輩の言葉だけで少し理解はできた。多分、昨日私が感じたことと同じだろう。


「今まで散々目をつけといて、よくそんなこと言えるわねあなた」

「うっせーな! 3年だからって偉そうに話かけんじゃねえ! 俺はこいつに言ってるんだよ」

「……だから、あなたたちみたいな人種……嫌いなのよ! 自己中心的で傲慢で、偉そうで……」

「ちょ、ちょっと榊さんも落ち着いて……鷲尾くんも、そんなこと言わないで、さ」


 間に入った榊先輩と浜岸先輩がまたもめだし、慌てた様子で立森先輩が声をかける。


「だからボクは反対だったんだよ、放送して呼びかけるなんて。案の定、一番来てほしくない乱暴者や、校内の問題児がやってきた。迷惑だ」


 それ見たことか、と言わんばかりに七瀬先輩がため息を落とした。

 さすがにそれは……言い過ぎじゃないのかな。
 案の定、浜岸先輩も大和くんもじろりと睨みつけた。本人は本を読んでいて全く気づいていないけれど。