確か図書室は、中等部の方にあるんだったっけ。ちょっと遠いけど、暇を持て余している今なら別にどうってことはない。
途中にある渡り廊下で体育館の方に向かって、そのままぐるっと回って図書室に向かう。
さほど大きくないけれど、独立した建物になっている図書室は、他の校舎よりも少し古い感じがあって、独特の存在感を放っていた。
なんか、絶版になった本がいっぱいありそうな感じ。見渡す限り本。しかも棚が高い。何冊くらいあるんだろう。
中に突き進んでいくと、そばにいた生徒がちらり、と視線を向ける。
……案外人がいるんだ。
試験も終わったって言うのに、なんで休みの日まで図書室にいるんだろう、と思ったけれどネクタイの色を見てわかった。
ほとんどが3年生だ。1年なんてひとりも見当たらない。
私と同じように、図書室にいる人たちも私のネクタイを見ているような気がした。受験勉強の邪魔にならないようにそっと足を踏み出して隠れるように本棚に向かう。
あんまり長居はしないように、悩まないで決めちゃわないと。
大和くんの言っていたのってこういうことなんだろう。
すごい、ぴりぴりしている。
“1年がくるんじゃねえよ”って言われているみたいだ。
この学校は学年の壁も大きい。中学の時もそういうのはあったけれど、比べ物にならない。まさか、こんなに注目されるなんて……。
人目を避けるようにそそくさと棚の影に入っていった。
「あ」
「……あ」
目の前にいた女の子と目があって、声がこぼれた。
私の声に反応して彼女も顔を上げて私を見るなり同じように言葉を発する。
「え、と。柿本さんも、図書室に来てたんだ」
1年は誰もいないと思ったから、ちょっとほっとした。
柿本さんに近づくと、彼女は一歩後ずさる。
じっと私を見つめる瞳が、長い髪の毛の奥から見える。
……もしかして、私警戒されてるのかな。え? なんで?
このまま距離を詰めるか悩みながら彼女を見つめ返すことしかできない。
ど、どうしたらいいだろう。
「あ、の」
どうしたの? と、聞こうと思ったとき。彼女の後ろからひとりの女の人がやってきた。紺色のネクタイをしているから、3年生。化粧が濃いせいか、きつい印象がある。