「ああ、それかー。輝は"外部組"だから慣れてないんだよねえ。私とか"内部組"ではあたりまえだからさー」

「そんなこと言って! 茗子は中間の時古文で10位とかだったじゃないー! 総合でも50番台だったし!」

「あははは」


 今日も"そんなことない"とか言ってちゃっかり上位に入るんだきっと!
 私なんて中間、総合は真ん中らへんだったけど、英語と現国は下から数えたほうが早かったんだから……。

 またあの公開処刑が行われるのかと思うと憂鬱にもなる。



 私の通うこの私立の学校は、中等部と高等部がある。
 中学から通っている学生は"内部組"、私のように高等部から入ってきた学生は"外部組"と呼ばれる。

 クラスの約3分の1が外部組。でもそれだけのこと。こうして茗子のような内部組の女の子たちと仲よく過ごせてるし。男の子の友達だっている。

 そう、そんなことはどうだっていい。
 問題なのは私立らしい、教育方針の方だ。

 まさか、テストの順位が全部壁に張り出されるなんて……知らなかった。それだけじゃなく、実技の順位も。100mを何秒で走ったかとか、音楽の歌のテストも。美術で描いた絵は順位付きで全部貼りだされる。

 順位至上主義、みたいな感じ。

 否が応でも友達と比べちゃって、辛いんだけど!

 中学の授業が違ったのか、この公開処刑の効果なのか、内部組はみんな上位。今のところ一番仲よくしてる茗子とか他の子もみんな内部だから、私が一番順位が低い……。


 ああ、もうほんっとヤダ。
 なんでこんな苦痛を味わうために片道1時間以上もかけて通ってるんだろー。中学まではそこそこ勉強できる方だと思ってたのに。

 晒すなら上位50名くらいまでにしてくれたらいいのになあ。自分の名前を300名前後の中から探し出すのも大変だっつーの!


 まあ、だからこその進学校なんだろう。


 ついでに言えば。
 テストが終わっても私は晴れ晴れとした気持ちで夏休みを迎えられない他の理由もあるわけで。


「なんで美化委員なんてあるのー!」

「あはは! 入学してすぐだったもんねえ委員会決めるの」

「やられたよ、ほんっと」


 この学校の美化委員会は、期末テストが終わってから夏休みに入るまでの休み中、学校の掃除をさせられるらしい。

 道理で人気がなかったはずだ。

 立候補形式で決められたから、事情を知らない外部組の私が選べるのなんて残りものしかない。なんとなく選んだらそんな面倒な委員だったなんて。