「あ、京介。来たんだ……」


京介が手を置いた場所をさすり、目を向ける。


てっきり来ないものと思ってたのに。


「バーカ。お前が危ない目に遭ってんのに、休んでなんていられるかよ」


「京介……臭いよ、そのセリフ。かっこいいとか思ってる?」


「う、うるせえな!」


なんて……ちょっと意地悪してみたけど、それは多分本心。


何かあるたび、こうして心配してくれて。


でも、素直になれないから、そうやって格好をつけるんだよね。


「でよ、例の幽霊どうなったんだよ。俺も一回見たいと思って鏡を見てたんだけどな。幽霊なんて見えやしねえよ」


そんな事をしてたんだ。


もしも本当に見たらどうするつもりだったのよ。


「学校の怪談だからね。京介が見てたのって、家の鏡なんじゃないの?」


「まあそうなんだけどよ。あーあ、幽霊が見えたら、菜月を守る為に堂々と家に呼べるのに」


フフッと笑いながら、もう一度私の頭に手を置く。


なーに言ってんだか。


そんな事がなくても呼べば良いのに、意地張ってるんだから。


私にしてみたら、京介が幽霊を見るよりも、幽霊をどうにかしたいという思いの方が強かった。