な、なんで真弥ちゃんが……。


鏡の中のナニかと目を合わせていないはずなのに。


いや……もしかすると鏡をひっくり返した時に目が合ってしまったのかもしれない。


恐怖を振り払うように飛び退いた私の背中に、テーブルが当たる。


「だから私は動けないの。菜月ちゃん、ごめんね」


顔が……笑っている。


暗闇の中で、不気味に微笑むその顔に恐怖を覚えたその時。

















「お願い……私を見て」













私の背後から聞こえた声に驚き、慌てて振り返るとそこには……。











伏せられていた鏡が私の方を向いていて、そこにナニかの顔が映っていたのだ。


「ひっ……」


小さな悲鳴を上げた瞬間、鏡の中のから白い手が伸びて、私の首を掴んだのだ。


何とか振りほどこうとするけれど、力が強くて離れない。


「かはっ……」


喉を押さえ付けられて声が出ない。








「大丈夫だよ、痛くないから。気付いたら……死んでるから」








さらに私の背後から聞こえた声。


ゆっくりと視界の右側から白い顔が侵食して来る。


声は真弥ちゃんなのに……現れたのはナニか。









「私を見てよ」









ぎょろりとした赤い目が私を見て……。


その手に持っていたガラス片が、私の額に突き刺さったのだ。





どこから夢だったのか、それともこれは現実なのか。


わからないまま私は、黒い闇に落ちて行った。