「私を見て!私を見てえ!私をををををを!見てえええええええええええええ!!」
ナニかの声と共に、鏡を引っ掻く音がより一層激しくなる。
鏡は大暴れして、今にも落下してしまいそう。
「真弥ちゃん!お願い、助けて!」
祈るようにして叫んだ私の声で……ようやく真弥ちゃんが動いた。
こちらに背中を向けていた身体を仰向けにして、顔だけこちらに向ける。
「ごめん、菜月ちゃん……私、動けない」
微かに聞こえた声に、耳から手を放してみるとそんな弱音を吐く真弥ちゃん。
「な、何言ってるの!?お願いだから助けて!」
ギリギリと、ますます激しくなる音に再び耳を塞ぐ。
そして……。
壁の鏡が、突然動きを止めたのだ。
……い、いなくなった?
鏡の中のナニかは、いつ、どこに現れるかわからない。
だから、どのタイミングでいなくなるのかもわからないから。
そっと耳から手を放して、ホッと胸を撫で下ろした。
「……ごめんね、菜月ちゃん。私、動けなくて」
「どうしたの?もしナニかを見ちゃったら、動かないと殺されちゃうよ」
そう言って、ベッドに手を置くと……。
グジュ……。
手が何かで濡れて、思わず手を見る。
暗くてわからないけど……慌てて布団を捲った私は……。
「だって私、もう死んでるから」
布団の中でお腹を裂かれて、内臓がこぼれ落ちている姿を見てしまった。