振りほどくように冷気を抜けた私は、鏡には目も向けずに、廊下の途中にあるお風呂場へ向かおうと、歩き出した時。












まだ、手首に冷気がまとわり付いている事に、私は気付いた。


何……?


ナニかがいるはずの場所は抜けたのに、手首がまだ冷たい。


腕を動かそうとしても、ピクリとも動かない。


嘘でしょ……何がどうなって腕が動かないの!?


昨日は動けないなんてなかったのに!


必死にこの場から離れようと、腕に力を入れたその時。




















「……どうして見てくれないの?私を見て!私を見てよおおおおお!!」
















耳元で聞こえたその声に、総毛立つ感覚に襲われて。













「いやああああああああああっ!!」














私は、喉が裂けるかと思うような悲鳴を上げた。


「な、何!?どうしたの!?」


その声に驚いたのか、目の前の襖が開き、真弥ちゃんのお母さんが慌てた様子で廊下に出て来た。


瞬間、フッと消えた手首の冷気。


ナニかが掴んでいた感覚がなくなり、解放されたのだという事がわかった。