さらりとした、絹の布のような冷気が私の足を撫でる。


このそんなに長くない階段が、永遠に続くほど長く感じる。


もう、この時点で嫌な予感しかしない。


上から下へと流れる冷気が、まるで私を地獄へと誘っているかのよう。


「……や、やめてよ。お風呂に入るって時に」


一段一段、引きずり下ろされないようにゆっくりと踏みしめながら、私は呟いた。


……私を見てか。


さっきも考えていた事だけど、気付いた事に気付かれると殺されるのかな?


それなら、音に反応した時点で気付いたと思われそうなものだけど。


もしかすると……ナニかと目を合わせなければ殺されないんじゃないのかな。


だからナニかは「私を見て」って言ったんだとしたら。


「目を合わせなければ……殺されないって事?」


まだ確信が持てないけど、まだ私が殺されていない事を考えると……そんな気がする。


不安を感じながら、ゆっくりと下りた階段。


玄関に到着した私を出迎えるように、鏡の中のナニかがニタリと笑みを浮かべて立っている……ように見えた。


大丈夫……何をされても、目を合わせなきゃ良いんでしょ?


それなら大丈夫のはず……。