「ちょっとトイレに行ってくるね」


「え?あ、うん。だけど……気を付けてね」


玄関の鏡に……という事だろうな。


確かにあれは、気を付けなければ思わず見てしまうほどの大きさだ。


ついうっかり……それがあるから怖い。


「うん、大丈夫。鏡は見ないようにするから」


「あ、うん。それなら良いけど」


少し心配そうな真弥ちゃんを不安にさせないように微笑んで、私は部屋を出た。


静かな廊下、私達の他には誰もいる気配が感じられない。


平日の昼間だ、両親もまだ仕事に出ているんだろうな。


なんて考えながら、階段を下りた私は、玄関の鏡の前までやって来た。


意識したくなくてもしてしまう、その圧倒的な存在感に、思わず目が向いてしまいそうになる。








……!?ダメダメ、一体何を考えてるんだろ。


見ちゃいけないんだよ?


昨日の夜もそれで殺されそうになったのに、どうして見ようと思ってしまうんだろ。


してはいけないと言われると、無性にしたくなってしまう。


後は好奇心。


ダメとか以前に、気になったらしてしまう性格だから我慢しないと。


絶対に見るなと、自分に言い聞かせながら、私は一歩踏み出した。