鏡の中から感じるナニかの視線が、私の鼓動を早くする。


全身を駆け巡る血液が、皮膚の内側をチクチクと刺激して……それなのに、寒くないのに手足が震える。


鏡を……ナニかを見ないように、階段の方に移動すると、鏡の中のナニかも私に合わせて動く。


大きな鏡。


私を追い掛けて来るような、その動きは気味が悪くて。


急いで階段に足を掛けた瞬間、背後から例の声が聞こえたのだ。













「……私を見て」














耳に届いた途端、ゾワゾワと背筋を撫でられるような感覚に襲われる。


「ひっ!」


恐怖に背中を押されて、慌てて階段を駆け上がった私は、上がってすぐの部屋の、ドアの前にいる真弥ちゃんの腕にしがみ付いた。


「な、何!?菜月ちゃんどうしたのよ!」


「い、いた!いたいた!いたの!鏡の中にナニかが!!」


「えっ!う、嘘でしょ!?」


私の言葉で、真弥ちゃんの動きが止まる。


ドアノブを掴んでいた手を放し、視線をゆっくりとドアの方に向けた。


「な、何でうちにいるの?私達が狙われてるって事?」


そう尋ねられても、私にもわからない。


ただ、鏡の中のナニかに気付いてはいけないという恐怖は、依然として継続しているのだ。