「ただいまー」


京介と別れて、真弥ちゃんの家にやって来た私は、真弥ちゃんに続いて中に入った。


「お邪魔しまー……」


挨拶をしながら、玄関に入った私の目に飛び込んで来たのは……正面に飾られた鏡。


まさか真正面にあるとは思わなくて、ビクッと反応してしまった。


だけど……。













ナニかが私達を殺そうと襲いかかってくる気配はない。


今はここにいないだけなのかな。


昨日と違って、今日は大勢の生徒がナニかに気付かれたみたいだから。


嫌な空気は感じない。


感じないけど……何かが起こりそうな感覚は残っている。


気を抜けば、昨日の夜のように、ふとしたタイミングでナニかを見てしまうかもしれないし。


「菜月ちゃん、この廊下の奥にトイレがあって、そこがお風呂ね。私の部屋は二階にあるから、早く行こ」


階段を上り、二階に向かう真弥ちゃん。


「あ、待って」


脱いだ靴を揃えて、真弥ちゃんの後を追う為に階段の方を向いた私は……。











視界の左側で、ナニかが鏡に張り付いて私を見ているのがわかった。












いないと思って気を抜いた瞬間、私を襲う激しい悪寒。


殺そうとはしていないようだけど……それがまた、不気味さを醸し出していた。