「か、影宮さん……もう、ビックリさせないでよ!」


影宮さんが悪いわけじゃないんだけど、いつの間にか背後にいるんだもん。


片桐さんの事件があった後だから、あの呟いていた言葉と怪談話が相まって、本当にナニかがいたのかと思ったじゃない。


「驚いたのはあなたの勝手でしょ。桐山さんはどうして私に驚いたの?」


目を隠すほどの前髪の間から、ジッと私を見て不気味な笑みを浮かべる。


どうしてって……影宮さんがそんな表情で立ってたら怖いよ。


などとは言えず、私はハハッと作り笑いをして、影宮さんに場所を譲る為に一歩横に移動した。


「何やってんだか。早く帰ろうよ」


そう言い、影宮さんより早く手洗い場の前を咲良が陣取ったのだ。


「雪村さん、次は私が……」


「早い者勝ち早い者勝ち!そんなに睨まないでよ。すぐに代わるからさ。あれ?そっちの子、影宮さんの友達?」


手を洗い、ハンカチで水気を拭った咲良。








そっちの子?













咲良は何を言ってるの?


影宮さんの他には、私しかいないのに。


そう思って、辺りを見回し、首を傾げた時だった。










「あ……」











そう、小さく呟いて……咲良が、ハンカチを床に落とした。