「で、なんでお前らは帰らないんだ？学校にいて、例の幽霊が出るってんなら、家に帰った方が良くね？」


この中で、ナニかの恐怖を味わっていないのは京介だけ。


そして、家がどれだけ恐ろしいかという事をわかっていない。


「家に帰ったら、もう明日を迎える事が出来ないかもしれないわ。私達は今、そんな状況下に置かれてるのよ」


昨日の夜の事を考えると、影宮さんが言っている事は決して大袈裟じゃない。


だけど、改めてそう言われると……気を抜けば、あっさりとナニかに殺されてしまう危険性がある事を思い出す。


気を抜いていて、脱衣所の鏡を見てしまったように。


「まあ、前田があんな死に方をしたんだから、お前らが言うならそうなんだろうけどよ。それにしても、残って何するんだ？」


私にもその理由がわからないのだから、京介にはもっとわからないだろう。


真弥ちゃんも首を傾げて、椅子に座っている皆の顔を見回す。


そんな中、樹森君が申し訳なさそうに手を挙げて口を開いた。


「もしかして影宮さん、幽霊を探そうとしてるんじゃないの？」


樹森君のその言葉で、一斉に影宮さんを見る私達。


そんな事はしないと思うけど……影宮さんは、不気味な笑みを浮かべていた。