「さあ、中身をぶちまけろ!」


私達が身を隠そうとするよりも早く、伊達君の手に持っている鏡が向けられた。


まずい!と、思うけど、足が動かない。


鏡面がこちらに向けられて、ナニかに襲われる……と、身構えたけど。











血に塗れた鏡の中に、ナニかの姿は見えなかったのだ。


「……桐山さん、助かったわ。そこにはもう、幽霊はいない」


「う、うん……」


とはいえ、まだまだ安心出来ない状況に変わりはない。


「なに?鏡を見たら絶対にいるわけじゃないのか?肝心な所で役に立たないな」


と、伊達君が首を傾げて鏡面を覗き込んだ時だった。














「お、お前ら!一体何をした!!紫藤……またお前か!」


息を切らせて階段を上ってきて、廊下に出るなり京介を睨み付けて、原田先生が駆け寄って来る。


「お、俺じゃねえし!!こいつだよ!間違えんじゃねぇ!」


勘違いされては困ると、慌てて教室内を指差して吠える京介。


「お前じゃなかったら他に誰が……」


そこまで言って、教室の中を覗き込んだ原田先生は、血塗れで立ち尽くす伊達君の姿を目の当たりにして……言葉を失ったようだ。


京介とは違い、成績優秀で真面目なタイプの伊達君が、どう見ても言い逃れが出来ない状況の中にいたのだから。