原田先生は、いつものように出席を取った後、神妙な面持ちで咲良の死を皆に伝えた。


何があったのか、どうして死んだかという事は話さずに。


それでも、もうとっくに皆知っていると思うけど。


「……まあ、妙な話が流れているようですが、皆はそんな噂に惑わされる事がないようにしてください」


「せ、先生。だけど、怪談が現実に起こっていると思います。変な声を聞いた人もいるらしいですし、鏡の中に何かがいるって……」


クラスメイトの一人が、手を上げて先生に反論した。


それを待っていたかのように、教室の中がざわめき始める。


「あれだろ?鏡の中の幽霊に気付いても、気付いた事に気付かれると殺されるって」


「雪村さんは鏡の中の幽霊に殺されたんだよね!?トイレの鏡の血が、内側に付いてたんでしょ!」


二人目の同級生の死、そして、鏡に残された不気味な数字。


それが生徒の不安を煽り、抑えていた感情がここで噴出した感じだ。


各々、言いたい事を言って騒いでいる。


この中で、本当に鏡の中のナニかの恐ろしさを知ってるのは何人いるのか。


教室を見回してみると、真弥ちゃんは俯いていて、反論をしていない。


そして……この中にもう一人。


真弥ちゃんと同じように俯いている人がいた。