「お、お前なあ……冗談言う場面じゃねえだろ」


「だから冗談なんて言ってないじゃない。私だけじゃなくて、真弥ちゃんもA組の影宮さんも殺されそうなんだけど」


私達だけじゃなく、他にも同じ境遇の人はいるかもしれない。


教室を見回すと、咲良の死を知って泣いている人や、いつもとあまり調子が変わらない人がいて、それを特定するのは困難だ。


私は……どうなんだろう。


咲良が死んで悲しいけど、その死があまりに衝撃的だったのと、自分が命を狙われているという恐怖が、悲しみを上回っている。


「ただの怪談だろ……それがなんで、お前を殺そうとしてんだよ」


そんなの知らないよ。


怪談だから殺そうとしてるんじゃないの?


ナニかに恨みを買うような事をした覚えはないし、「見てしまった」から殺されそうなだけ。


誰も座る事のない咲良の席を見つめながら、私は溜め息を吐いた。


「とにかく、私は鏡に映っちゃうとナニかに殺されるからね。私に鏡を見せないでね」


「……良くわかんねえけど、鏡を見せなきゃ良いんだな」


そんな事を話している間にも、担任の原田先生が教室に入って来て、朝のホームルームが始まった。