教室の並びにある、一番近くにあるトイレにいた。


用を足して、手洗い場に戻ると、今度は咲良が入れ代わりに。


「ところでさ、菜月は紫藤君とどこまでいってんの?もうエッチしちゃった?」


個室の中から、サラリととんでもない質問をする咲良。


「ま、まだだけど……まあ、キスくらいはしたかなー?」


私も何を言ってるんだか。


鏡に映る自分の前髪に触り、髪型を整える。


「それより咲良はどうなのよ?彼氏は……」


と、そこまで言った時だった。













「……私を見て」












低く、唸るような声が、私の耳に届いたのだ。


「え?咲良?何か言った?」


空耳だったのか、それとも咲良が言ったのかは分からないけど、やけに耳に残る声だ。


「何も言ってないけど?ちょっと待ってて、今出るから」


トイレの水を流す音が聞こえて、咲良が個室から出て来た。


やっぱり……空耳なのかなと、鏡を見た私は……視界の中に映る、そこにはいるはずのないものに気付いてしまった。













私と咲良以外には誰もいないトイレ。










なのに、鏡の中の端っこに……見た事もない女子生徒が映り込んでいたのだ。