「私は大丈夫よ……押し入れの中で難を逃れたから。それよりも、桐山さんは鏡を見なかったようね。賢明な判断よ」


「え、いや……私も見ちゃったんだけど、なんとか助かったんだ」


私の言葉に、驚いたような表情を浮かべて、でもすぐに元の表情に戻る。


「見たのなら分かってるわね?鏡に映ってしまったら、いつ殺されてもおかしくないわ」


そう言って、家のすぐ近くにあるカーブミラーを指差す。


そうか……外には隠しようのない、あんな鏡もあるんだ。


「まあ、カーブミラーにあれが現れるかはわからないけど。私達が使ってる鏡とは、構造が違うから」


ナニかはガラスや水の反射の中には存在しない。


それを教えてくれたのは影宮さん。


ガラスや水も、鏡と同じ光の反射のはずだけど、私達にはわからない何か条件みたいなものがあるのかな。


「か、考えてても仕方ないね。影宮さんがここまで来られたなら、学校まで行けるよね」


「少し遠回りをしなきゃならないけど、行けなくもなさそうね」


影宮さんはニヤリと笑みを浮かべて、辺りをキョロキョロと見回した。


それにしても、昨日のメッセージといい、ここまで来た事といい、どこから私の情報を得たのだろう。


ナニかもだけど、それが少し怖く感じた。