鏡の中にだけ映る、その不気味な顔。


階段に立っている醜悪なその表情が、さらにニタリと笑みを浮かべて。


手にガラスの破片のような物を持ち、私に向かって向かって来たのだ。


「ひっ!!」


慌てて階段の方を向くけど、やっぱり誰もいない!


再び脱衣所の鏡に目を向けると、鏡の中のナニかはガラスを振りかざし、私に迫っていた。


私の頭部に、ガラスの先端が振り下ろされる。


「い、嫌っ!!」


後ろにあるドアノブを回し、身体を預けるようにしてリビングに転がり込んだ。


床に倒れ、今までにない恐怖が私を包み込む。












見てしまった……見ないようにしようと、注意していたのに。


まさか、脱衣所のドアが開いていて、それをうっかり見てしまうなんて。


ナニかが振り下ろしたガラスがかすったのか、左手の甲に小さな切り傷がある。


見えないナニかから、無意識に庇おうとしていたから傷を負ったのか。


それより、リビングに入ったら襲われる気配がない……。


鏡に映ってさえいなければ、殺される事はないの?


だったら……もしかしたら、影宮さんも今の私と同じ状況なのかもしれない。


スマホを触れるような状況にないのかな。