「な、何だこれは……ひっ!来るな!」


鏡の突然の変化に驚いた原田先生が、私の首から手を放して後退する。


「あ、ああっ!た、助けて、京介!!」


ねっとりと絡みつく、鏡から伸びる触手のような物が、私を鏡の中に引きずり込もうと引っ張る。


ワラをも掴む思いで後ろに手を伸ばして、手に触れた物を握り、力いっぱい引き寄せた。


「は、放せ!俺を巻き込むな!」


私が掴んだのは……原田先生の服の袖。


その手は……ナイフが握られていない方の手だ!


私を引き離す為なら、ナイフを突き立てかねない!


そう思った瞬間。












「菜月!ふざけんな原田!!」











ドンッという音と共に、腕を掴んでいた手に抵抗がなくなった。


そして、私の目の前に振り下ろされたナイフが、鏡から伸びる何かを切断して……原田先生が、私と鏡の間に、よろめきながら割って入ったのだ。


「う、うわあああああっ!!や、やめろ!た、助けてくれっ!!」


私にまとわり付いていた物が、原田先生に移るようにまとわり付き始める。


「菜月を放しやがれ!!」


京介が私の身体に腕を回して、グイッと後方に引っ張った。