瞬間、鏡のマーブル模様が濃くなった。


透き通って壁が見えていたほど薄かったのに、今はそれも見えないほどに。


禍々しい気配が……冷気が、一気に放流されたように室内にあふれた。


その空気が肌を撫でるだけで、皮膚の表面が切り刻まれそうな錯覚に陥る。











「私を見て……私を……見て!」











鏡から聞こえたその声に、原田先生が驚き振り返る。


「な、何だ……そこにいるんだな!智奈美!」


ナイフを構えて、原田先生は鏡に近付くと思ったのに……。


急に私達に接近したと思ったら、私の制服の胸元を掴んで、強引に引き寄せたのだ。


「菜月!」


「おっと、近付くなよ紫藤。桐山を死なせたくなければな」


喉元にナイフを突き付けられ、身動きが取れなくなった私を、原田先生は鏡の方に押し出した。


「桐山、智奈美に出て来いと言うんだ。そこにいるのはわかってるんだよ!」


首根っこを押さえられ、グッと鏡に突き付けられた。


すると……鏡面から、私に向かって何かが伸びて来た。


「ひ、ひっ!!な、何これ!!」


それが私に触れて、身体の表面を這うように広がって行く。