「一つだけ教えておいてあげようか。皆が探している欠けた鏡なんてものは存在しないんだよ。なぜなら、あいつが突っ込んで割った鏡こそが、その欠けた鏡で……今は枠だけになってるんだからな」


そう言って原田先生が指差した先にある、鏡の枠。


壁に立て掛けられ、ポッカリと空いている空間が、雰囲気と相まって不気味さを醸し出している。


「わけわかんねえ!だったらなんで、俺達と一緒に欠けた鏡を探したんだよ!最初からそう言えば良いだろ!」


鏡に囲まれた中で、京介が原田先生に掴みかかる。


でも、原田先生はあっさりとその腕を振りほどき、私達の方に京介を突き飛ばしたのだ。


「30年前、ありもしない欠けた鏡を探して、皆学校中を駆け回っていたよ。結局見付からなかったようだが、それでもこの事態は収まったんだよ。何もしなくても、時間が来ればね」


ナニかを恐れていないのか、数字が書かれた鏡を撫でてニヤリと笑った。


時間が来れば……それはつまり、数字の数だけ人が死ねばって事なの?


欠けた鏡はなくて、それでも一緒に探すフリをしたのは……生徒達が勝手に死ぬのを待っていた為?